整形外科を中心とした医療と機能回復

医療センター診療科のご紹介

運動発達の異常について

子供が順調に成長しているかどうかは、誰しも気になるものです。当センターの小児科では運動発達の異常が見られる児の診療を専門的に行っており、早期から関わってあげることで、発達が促進されるなどの成果をあげています。そこで、今回は小児の運動発達の異常について、その原因と診療の様子などを分かりやすく説明します。

原因

運動発達に異常をきたす主な原因として、以下のようなことが考えられます。

(1)発達速度の個人差
育児書には生後3~4ヵ月で首が据わり、5~6ヵ月で寝返りをし、7ヵ月でお座りが出来、8ヵ月ではいはいをし、10ヵ月でつかまり立ちをし、1歳で歩くというように書いてあるかもしれません。これはあくまでも平均であって、個人差はかなりあります。特に、早産児の場合には誕生日ではなく、出産予定日を基準にして発達を評価していくことも必要です。

(2)脳性麻痺
出生前、出生時、新生児期などに脳に障害を受けると、四肢や体が突っ張ったり、ふらふらして自分の思うように動かせなくなることがあります。脳性麻痺と呼ばれます。一般に、麻痺というと手足が全く動かせない状態を想像される方が多いと思います。しかし、神経の障害により動くことは動くのですが、スムーズでなく異常な動きになってしまう場合も、医学的には麻痺と呼んでいます。

(3)筋肉や骨の病気
筋肉の病気で筋力が低下していたり、骨の発育が十分でなかったりすると、運動発達は遅れます。

(4)ホルモンや代謝の異常
甲状腺ホルモンの分泌が低下すると、運動のみならず全体的な発達が遅れることが知られています。先天性の代謝異常症でも同様のことが起こりえます。

(5)精神発達遅滞、自閉症など心の発達障害
四肢に麻痺がなくても、心の発達がうまくいかないと運動も遅れてしまうことが多いものです。はいはいできるようになった乳児は、なぜはいはいするのでしょうか? お母さんの所へ行きたいとか、向こうにあるおもちゃを取りに行きたいとかいう時に、その移動手段として使っていると思われます。時には、はいはいという体の動きそのものを楽しんでいる場合もあるかもしれません。いずれにしても、何かをしたいという気持ち、すなわち欲求がなければ動く必要はない訳です。そして、動かなければ、当然ながら手足の機能は発達していきません。心と体はセットになって発達していくものなのです。

(6)その他
はいはいや足底をついて立つことをいやがり、お座りスタイルで移動することを好む児もいます。シャッフリングベビーといって、歩行開始が遅れますが、一旦歩行し始めるとその後は問題なく発達していくことが多いです。運動発達のバリエーションの一つであろうと言われています。

診察

診察は次のような手順で行われます。

小児科外来で問診票をお渡しします。妊娠中や生まれた時の状況、その後の発育・発達の様子などをご記入ください。

診察室では医師が直接話をお聞きします。その際、母子手帳を持参されていると大変参考になりますので、忘れずにお持ちください。

続いて、筋肉の緊張の度合い、体の動き、麻痺はないかなど診ていきます。当小児科の特徴として、診察にボイタの姿勢反応を取り入れています。これは、児を抱えあげていくつかの姿勢をとらせて、その時の反応を見るものです。発達とともに反応が変化していきますので、どの発達段階にあるかが分かります。病的発達の場合は特有の反応を示すこともあります。

また、表情は生き生きしているか、物を目でしっかり追うか、手を伸ばして取ろうとするかなどは、心の発達が順調かどうかの参考になります。

身長、体重、頭囲、胸囲などの身体計測を行い、バランスのとれた発育ができているかも確認します。

検査

必要に応じて次の検査を行うことがあります。

(1)遠城寺式発達検査
運動・社会性・言語などに分かれた質問項目に答えることで、それぞれの分野での発達段階を知ることが出来ます。

(2)血液検査
一般的な貧血の有無、肝機能、腎機能などの他に、筋肉の病気の時に上昇する酵素、甲状腺ホルモンなどを調べます。

(3)頭部MRI
脳に萎縮はないか、脳性麻痺児に多く見られる脳室周囲白質軟化症はないかなどを調べます。

(4)脳波
年齢に見合った基礎波があるか、てんかん波などの異常波はないかなどを調べます。

治療

運動発達の遅れを心配して来院されても、発達速度の個人差の範囲であり、異常なしと診断されるケースも多くみられます。この場合にはその後の受診は要りません。

遅れがあると判断されたり、麻痺や筋力低下などの病的な異常がある場合、あるいはご両親の不安が強い場合には、育てていく上でのアドバイスをするとともに、外来で定期的に発達をフォローアップします。必要に応じて、訓練士に評価・指導・訓練などを依頼することがあります。親子入園しての集中訓練と精査をお勧めすることもあります。ホルモンの分泌低下が原因の場合には、ホルモン補充療法を行います。

このように、お子さんの特性に合わせて、その能力を最大限伸ばしていけるようお手伝いいたします。